サンゴ礁再生事業概要

世界のサンゴ礁の状況

サンゴ礁の海は、海洋面積全体の 0.2%を占めるのみですが、海に生息する生きものの4分の1がサンゴ礁の自然に関わって生きているといわれています。

http://www.wwf.or.jp/shiraho/nature/nature1.html

サンゴ礁の危機

東京大学大学院新領域創成科学研究科教授◆石 弘之 出典:http://www.sof.or.jp/jp/news/1-50/6_1.php
現在、世界人口の3分の1の約20億人が海岸から100キロ以内に住んでいるといわれる。沿岸部は人類にとってつねに最重要な生活拠点なだけに、その影響をもっとも被り、とくに環境の変化に脆弱なサンゴ礁は危機的な状態にある。

1.死滅するサンゴ礁

サンゴ礁は、古いものでは250万年もかかって腔腸動物のサンゴがつくり上げた地球上で最大の構築物であり、「海中の熱帯林」といわれるように生態系のかなめだ。これまで、造礁サンゴは約800種、サンゴ礁に生息する魚種は約4000種が知られているが、これ以外に数百万種の未知の生物がサンゴ礁に依存して生きているという推定もある。サンゴが死滅すればサンゴ礁が崩壊し、これだけ豊かな生き物も絶滅するしかない。
米国の世界資源研究所(WRI)は、1998年に『危機にひんするサンゴ礁』と題する報告書を発表した。それによると、世界で25万5300km 2 あるサンゴ礁のうち、27%が絶滅またはその寸前にある「高程度」、31%が急減している「中程度」、併せて6割近いサンゴ礁が危機にさらされている(グラフ)。1993年の調査では、危機状態のサンゴ礁が4割だったから、破壊が一段と進んだことになる。
中でも、世界のサンゴ礁の4分の1を占める東南アジア海域ではサンゴ礁の56%、同じく7分の1を占めるインド洋で46%が、それぞれ危機状態にあり、アジアできわだってサンゴ礁の破壊が進んでいることをものがたっている。とくに、フィリピンで85%、インドで68%、インドネシアで50%のサンゴ礁が、絶滅またはその寸前にある。

■世界のサンゴ礁の危機の程度
世界資源研究所(WRI)が98年に発表した報告書『危機にひんするサンゴ礁』によれば、世界で25万5300km2あるサンゴ礁のうち、27%が絶滅またはその寸前にある「高程度」、31%が急減している「中程度」、併せて6割近いサンゴ礁が危機的状態にあるという。
2.死滅の原因

同報告書によると、サンゴ礁の死滅の原因は、36%が毒物や爆薬を使った破壊的漁法を含む「過剰開発」、22%が「陸上からの汚染と流入土砂」、12%が都市下水流入などの「海洋汚染」である。この破壊的漁法というのは、アジアから南太平洋の海域で急速に広がっている。漁師が潜って目的の魚を見つけると、プラスチック容器に入れた青酸化合物をまいて魚をマヒさせる。浮き上がってきた魚を網ですくい上げ、しばらく飼って青酸化合物を抜いてから仲買人に引き渡す。
爆薬を使った「ハッパ漁」は、ビール瓶などに火薬をつめて導火線を押し込み、火をつけて綿で栓をして海中に投げ込む。海底で爆発すると、衝撃で魚の浮袋がふくらんで海面に浮き上がってくる。
いずれの場合も、小型の魚や海底の小動物、とくにサンゴには致命的だ。サンゴは青酸化合物にきわめて弱く、体内で共生して養分をつくり出していた褐虫藻がまず死に絶え、栄養を絶たれて死んでいく。また、海底で火薬を爆発させると、その衝撃で周辺のサンゴは死滅する。いずれも違法だが、漁業資源の枯渇とともに、この漁法が東南アジアで広まり、サンゴは各地で致命的な打撃を被っている。 こうしてサンゴ礁でとられたメガネモチノウオ(ナポレオンフィッシュ)、ハタ、イセエビ、オニダルマオコゼ(ストーンフィッシュ)などの高級魚の行き先は、香港、上海、バンコクなどの活魚が売り物の海鮮料理店だ。高価な料理だが、東南アジアや中国の大都市では、観光客だけでなくニューリッチ層がこうしたレストランに押し寄せるようになった。
近年の漁業資源の急激な枯渇で、もはや網や1本釣りではとてもこれだけの活魚ブームの需要には応えられない。破壊的な漁法でサンゴ礁が破壊されて漁獲が減ると、さらに魚をとるためにあたり構わず大量の毒物を海に流し込む。この漁がもっとも盛んなフィリピンからインドネシアにかけては「海のアマゾン」と呼ばれ、300種を超えるサンゴが知られ、約2500種、全海洋魚種の4分の1が生息する世界でもっとも豊かな海だ。この漁のために、海域のいたるところでサンゴ礁が崩壊している。

3.温暖化とサンゴ

サンゴが色素を失って漂白したように白くなり(白化)弱ってきて死滅する現象も、原因が確定できないままに不気味な広がりをみせている。1982~83年のエルニーニョの後、まずカリブ海から米国フロリダ州沖にかけて、サンゴが白化を起こして広い範囲にわたって死に、その後太平洋からインド洋でもみられるようになった。日本の沖縄でも1998年春に発見され、環境庁が緊急の調査に乗り出した。 すでに、南米エクアドル沖のガラパゴス諸島では97.0%、パナマ湾で84.7%、パナマ沖のチリキ湾で76.1%といった具合でサンゴが死滅した。エルニーニョで海水温が4~7度もはね上がり、東太平洋一帯に「500年に1度」といわれるほど、大きな温度変化が起きたことが原因とみられている。1997年のエルニーニョでも、東太平洋でサンゴ礁に新たな「白化」が広がった。
だが、海域によってはエルニーニョが収まっても白化がつづいているのは、地球温暖化による海水温の上昇による可能性が強い。水温に敏感なサンゴの組織中の褐虫藻が、海水温が上がると死に、その結果、サンゴの炭酸カルシウムの白い骨格がみえるようになったのが、この白化現象と考えられている。二酸化炭素を炭酸カルシウムの形で大量に固定しているサンゴ礁が失われると、地球温暖化を加速することにもなる。
世界銀行の調査では、世界で約5億人が、サンゴ礁の100キロ以内に住んでいる。この人口が都市排水、埋め立て、水質汚染、海岸開発による土砂流入、レクリエーション などでサンゴ礁を破壊している。浅瀬に広がるサンゴは、天然の防波堤の役割を果たしているが、サンゴ礁が崩壊すると波が防ぎきれなくなって海岸線が浸食される。東南アジアのサンゴ礁が崩壊した海岸では、台風の接近のたびに海岸が大きく削り取られている。

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